光トランシーバの波長早見表 — 850nm・1310nm・1550nmの違いと選び方

2026.08.14|選定ガイド|潤徳商事株式会社

「Cisco の LR は何 nm?」「SR と LR で光の色が違うと聞いたが、混ぜて使えないのか?」— 光トランシーバの調達では、波長にまつわる質問が頻繁に出てきます。波長は単なるスペック値ではなく、使えるファイバの種類と到達距離を決める根幹です。本稿では主要3波長を早見表として整理し、型番から波長を見分けるコツまでまとめます。

光トランシーバの主要3波長を比較した早見表。850nmはマルチモードで10GBASE-SRなど最大400m、1310nmはシングルモードで10GBASE-LRなど最大10km、1550nmはシングルモードで10GBASE-ERやZRなど40〜80km以上
図:光トランシーバの主要3波長 — 型番から波長がわかる早見表

結論 — 型番の末尾で波長がわかる

先に答えを書きます。イーサネット系の光トランシーバは、型番の末尾のアルファベットで波長がほぼ判別できます。

  • SR・SX(Short Reach)→ 850nm、マルチモード
  • LR・LX(Long Reach)→ 1310nm、シングルモード
  • ER・ZR(Extended / さらに長距離)→ 1550nm、シングルモード

つまり「Cisco SFP-10G-LR は何 nm か」の答えは 1310nm です。同じ10Gでも SFP-10G-SR なら 850nm になります。

850nm — マルチモードの短距離帯

データセンター内でもっとも多く使われる帯域です。マルチモードファイバ(MMF)とセットで使い、光源には安価な VCSEL(面発光レーザー)が使えるため、モジュール単価を低く抑えられます。

  • 該当規格:10GBASE-SR、25GBASE-SR、40GBASE-SR4、100GBASE-SR4、1000BASE-SX
  • 到達距離:OM3 で 300m、OM4 で 400m(10G の場合)
  • 注意点:速度が上がるほど距離が縮みます。同じ OM3 でも 25G では 70m 程度まで短くなります

ファイバ側の等級による違いは「光ファイバの選び方」で詳しく解説しています。

1310nm — シングルモードの標準帯

拠点間・ビル間など、SR では届かない距離の標準的な選択肢です。この帯域はファイバの波長分散がほぼゼロになる領域で、長距離伝送に適しています。

  • 該当規格:10GBASE-LR(10km)、40GBASE-LR4、1000BASE-LX
  • 40GBASE-LR4 は 1310nm 帯の中で 4 波長(1271 / 1291 / 1311 / 1331nm)を使い、1 本のファイバで 40G を実現します

ここに一つ例外があります10GBASE-LRM は 1310nm でありながらマルチモード用(最大220m)です。古い OM1 / OM2 配線を敷き替えずに 10G 化したいときの救済策として設計されたもので、「1310nm=シングルモード」と覚えていると取り違えます。

1550nm — 長距離帯と波長多重

ファイバの伝送損失が最小になる帯域です。1310nm より遠くまで光が届くため、40km を超える長距離で使われます。

  • 該当規格:10GBASE-ER(40km)、10G ZR(80km級・IEEE 規格ではなくベンダー仕様)
  • 受光素子には高感度な APD が使われることが多く、そのぶん高価です
  • DWDM の C バンド(約1530〜1565nm)もこの領域にあります

なお長距離用モジュールを近距離で使うと、光が強すぎて逆に通信できないことがあります。この点は「光レシーバの選定ガイド」で解説しています。

対向機とは必ず波長を揃える

もっとも基本的で、それゆえ見落とされやすいルールです。ファイバの両端に挿すモジュールは、同じ波長・同じ規格でなければ通信できません。SR(850nm)と LR(1310nm)を対向させてもリンクは上がりません。メーカーが違っても規格が同じなら対向可能ですが、逆に同じメーカーでも規格が違えば通信できない — 判断の軸はメーカーではなく規格です。

例外的に、BiDi(単心双方向)モジュールは上りと下りで異なる波長(例:1310nm / 1550nm)を使い、1 本のファイバで双方向通信を行います。この場合は対向側と波長の組み合わせが逆になったペアで使う必要があります。

CWDM と DWDM — 1本のファイバに複数の波長を通す

ファイバの敷設本数を増やさずに容量を増やす方法が波長多重です。

  • CWDM:1270〜1610nm を 20nm 間隔で使用。波長間隔が広く温度制御が不要なため、低コストで導入できます
  • DWDM:C バンド内を 0.8nm(100GHz)や 0.4nm(50GHz)といった狭い間隔で使用。多波長を詰め込めますが、レーザーの温度制御が必要で高価です

いずれも「何 nm のモジュールか」が型番で厳密に指定されるため、既設設備の波長プランと突き合わせて発注する必要があります。

まとめ — 発注前に確認する3点

  • 既設ファイバはマルチモードかシングルモードか(波長はここでほぼ決まります)
  • 必要な距離(850nm → 1310nm → 1550nm の順に遠くまで届きます)
  • 対向側のモジュール規格(両端で必ず揃える)

VELRA では 850nm 帯の SFP-10G-SRSFP-25G-SR-S、1310nm 帯の SFP-10G-LRSFP-10G-LRM などをご用意しています。SR と LR の使い分けはこちらの記事もあわせてご覧ください。「既設ファイバの種別が分からない」「この距離ならどれを選ぶべきか」といったご相談も承ります。

本記事は一般的な技術情報の提供を目的としており、特定の構成での動作を保証するものではありません。波長・到達距離は規格上の代表値であり、実際の値は各モジュールの仕様書をご確認ください。記載の社名・製品名は各社の商標です。